季節の贈りもの
4月の彩り
 春本番を迎えました。3月中旬以降に暖かい日が続き、桜は一気に開花かと思いきや、月末は花冷えの日々。結局見頃はほぼ平年並の4月始めとなりました。入学式の頃の桜吹雪はやはり気持に馴染みます。可愛らしいランドセル姿も4月の風景の一こま、行きかう人々の表情も和んで見えます。花や木が勢いを増すにつれて、訪ねてくれる小鳥の数も増えました。鶯の歌声がいつの間にか上達して「ホーホケキョ」になっています。3センチほどのトカゲの赤ちゃんが庭石の上で日向ぼっこをしていますが、小鳥が多いので気が気ではありません。春は命の季節。空気がやさしくなりました。

 
桜色の散歩道
 ある日夫と短いドライヴ&散歩に出ました。4月下旬の長閑な日でした。小野路の小野神社で車を止め境内を散策しながら写真を撮りました。神社、仏閣の静かな空気を愛した夫は、石段をゆっくりと登って神殿の前に行き、お賽銭を投げて何かを祈っているようでした。それから神木や社にカメラを向けて熱心に撮っておりました。私は写真を撮り続ける夫を遠くから眺めながらその姿を写しておりました。その後立ち寄った野津田のひなびたお寺(名前が分かりません)では写真は撮らず、小高い境内から眼下に広がる菜の花畑の見事さに見惚れていました。最後に車を止めたのは野津田公園でした。すっかり葉桜になった桜並木が、鎌倉街道から700メートルくらい先のグラウンドまで続いていました。ゆっくりと並木の下を歩きながら、夫が「そうか、惜しいことをしたな」とぽつんと言いました。町田には美しい桜の名所が随所にあり、毎年その川沿いや丘陵を歩いていましたのに、家から車でほんの10分くらいの近距離にあるこの公園をなぜか一度も訪れることが無かったのです。来春を期すことが叶わないことを私達は知っていました。「そうね」と返しただけで後は二人とも無言でした。その翌年から数えて4回目、今年も野津田公園の桜並木を訪れました。ここには誰を誘うこともせず人がいない早朝の1時間くらいをゆっくり歩きながら沢山の写真を撮ります。今年の桜は3月21日に開花してからゆっくり2週間をかけて4月6日に最盛期を迎えました。お天気も良く、淡いピンクに朝の日差しが淡いグレーの影をつけていました。今夫の写真の周りはさくら色に染まっています。夫の笑顔がいっそう大きくなりました。 

 
 夫がNECで仕事をしていた頃にさくらの話を「新田家の掲示板」に遺しています。以前遺稿集に載せましたので、お読みいただいた方もいらっしゃるかもしれませんが、さくら好きだった夫の横顔をちょっとご披露させていただきます。
増上寺のさくら
 仕事の合間に時間を見つけて芝公園から増上寺のさくら の名所を散歩して来ました。芝公園はさくらの下に陣取 ったシートが30〜40位敷かれてあって、昼間なのにもう宴会を始めている組もありましたが、夜の見物パーティ のために陣取りに来た人達が退屈そうに本を読んでいたり、ラジカセをイヤホーンで聴いたりしているのが目立ち ました。但しさくらはもう随分散り始めていて、シートの上が花びらでいっぱいになっていました。
 増上寺の境内はいろいろな出店が出ていて、賑やかでした。さくらも大木あり、枝の充分伸びた木ありで、見応えがありましたが、特にしだれざくらが多く、これは奇麗でした。 
 この期間だけ徳川将軍の霊廟がオープンになっていて、寺の後ろにあるので訪れる人も少なく、ゆっくり楽しめました。2代から14代までの将軍の内、7人の立派なお墓 がありました。(あと一つは合祀碑)。家康の墓がないので、何処にあるのか聞いてみたら、日光東照宮と静岡の久能山と上野の寛永寺に分骨して祀ってあるとのことでした。入院が遅れたお陰で、今年も 例年にも増してさくらを楽しみました。
2003年4月7日  謙治郎 
 

 
小さな命
 庭のそこここに名も知らぬ雑草が沢山生えてきています。庭に在りながら何の手入れもしてもらえないどころか、迷惑がられる存在の雑草にも季節は隔たりなく新しい命を吹き込んでいきます。それぞれの草に5ミリにも満たない小さな小さな花がひっそりと咲き始めました。つい見過ごしてしまいそうなこうした花も目をこらしてよくよく見ればこんなに可憐な姿をしています。そしてその小さな命に支えられる小さな生き物の存在もカメラの目の中にありました。

花の直径2ミリに満たず

こちらも2ミリ足らず

3ミリほど

直径2ミリほど

1ミリほど

2ミリ足らず

直径3ミリ:コオニタビラコ、
葉の上にバッタの赤ちゃんも

直径5ミリほどの烏野豌豆
蕾の周りに蜜集めの蟻も

いぬふぐり
長さ5ミリほど
4月7日写す

 
 4月も半ばになりました。いつもより少し長めに桜が滞在して北へ、山へと去っていきました。その後を引き継ぐように野にも里にも美しい花々が咲き揃い、色の競演が始まりました。これから5月までは一年中で最も色彩の豊かな期間ですね。春の日差しの中で彩を増す命の輝きを見つめたいと思います。

 
イースター
 ご存知の通り復活祭はキリスト教の大切な祝日です。イースターサンデーの決め方は春分の直後の満月の日の次の日曜日ということだそうですが、元になる暦によって日が異なるようです。で今年はと申しますと、グレゴリオ暦を用いる西方教会では4月12日、ユリウス暦を用いる東方教会では4月19日がその日ということだそうです。友人が信じている説によれば「Easterはゲルマン民族が元々行っていた春の祭典(Eostre《春の女神》を迎えての)にキリストの復活を祝う祭りを重ねた」とのことです。キリスト教徒ならずとも冬の長いアメリカ東部や北欧の人々にとって春を待ちわびる思いは切実です。まだ氷点下の気温が続く頃から、あちこちの店先にシクラメンやイースターツリーが飾られ始めます。4月ともなりますと町の華やぎは最高潮。春の訪れを喜ぶ人々が繰り出し、可愛いオーナメントと美しい花々に彩られて町は大いに活気付きます。仏教徒の私は教会のミサに出向いたりはしませんが、春を迎えて心浮き立つことに変わりはなく、町で見つけたお気に入りや娘からのプレゼントのイースターオーナメントを飾って悦に入っておりました。「どうしてイースターはエッグとバーニーなの?」と何人かの友人に質問してみましたら「卵は雛が孵ることから復活、蘇りを意味している、その卵を野兎が運んでくる(らしい)」「野兎は子沢山なので命の象徴」などの答が返ってきました。雪融けの頃から庭に現れて、芽吹いたばかりの緑を食んでいる可愛い子兎を見れば、春の使者とみなすのが自然な気もするのですが。

玄関のイースター飾り


ショーケースのイースター

4月のショーケース

春の使者

卵型ローソク

野兎と花飾りの卵

卵に乗った兎と雛

卵を守る親鳥

陽だまりの小鳥達

野兎の家族

庭のイースター

西洋柊(holly)枝上の巣


花壇の中の野兎母子


庭の華やぎ
 桜から後を任されて春色の木の花が咲き誇っています。主流はやはりピンクのようです。木々の芽吹きも盛んになりました。庭が緑で埋め尽くされるのも間近かでしょう。土手には土筆や蓬も育っているのでしょうか。風の中に草の匂いがします。


海棠


乙女椿


石楠花

付録 さくらドライブ

5月の彩り

彩りの12ヶ月 目次