一月の茶室


新たな年を迎えました。空の蒼、陽射しの輝きも常に勝る明るさと清らかさに充ちているように感ぜられます。私たち茶の湯を学ぶ者達が、年明け最初に迎える行事を初釜と申します。炉に今年始めての炭を熾し、釜に湯を沸かして茶を点て、社中の方々と共に新春を祝う行事です。この日の茶室の飾りつけは、年の初めの慶びと、これからの一年の日々の幸せを祈る思いを込めて、常よりは明るく華やかにしつらえます。そして茶道具もこの日ばかりは大振りで、縁起の良いものを用意し、お客様のおもてなしに心を配ります。平成20年新春の茶室風景をお届けします。


 
初釜の日の茶室(広間八畳)

床の間 軸:鶴、床花:縁起花、干支香合:子 
掛け柳:青竹に柳、椿
風炉先、棚:竹台子 点前用皆具一式置き付け


 
 
 
床の間

「鶴」一筆書き、鶴の姿
にも見えます。
(夫が中国で求めたもの)

床花

花入:唐銅広口
花:松、白菊、黄菊、
葉牡丹、朱と黄の千両。


 
干支香合

「子」母の弟の神社(京都藤森神社)
から毎年送られてくる木彫りの香合、
初釜にはなくてはならぬ一品です。


 
 
 
棚:竹台子

茶器:住吉蒔絵 月峰作
左奥:柄杓と飾り火箸を立てた杓立
左手前:蓋置きを中に置いた建水
右:輪島黒塗手桶形水指

掛け柳

花入:青竹
花:柳と根〆は紅白椿。
流した柳の一部を結んで輪を作ります。
これは、お茶の心「和」を意味します。


 
 
 
初釜に使われる道具

初釜にはこの時だけに使われる道具がいくつかあります。
始めて火を入れる為の嶋台炭台、社中の皆さんに今年最
初のおもてなしの濃茶を点てる、嶋台重茶碗などがそれに
当たります。お客様がお集まりになりますと、始めに炭点前
から初釜の行事が始まります。

嶋台台炭

香合:貝絵付け白磁
(ティファニ-製の小物入れの転用
「見立てもの」といいます)
羽根:鷹

座箒

炭点前の後に座箒で点前座から茶
道口までを清めます。
犬鷲の羽根で出来ています。

 


 
 
炉、炉縁、釜

炉縁:高台寺蒔絵
釜:万代屋釜


 
 
竹台子の前に置き合わせた茶入と
嶋台和楽金銀重茶碗
(楽焼茶碗に上は金、下は銀を施したもの)

ここに準備されたものが嶋台濃茶点前の道具一式です。
これから人数分の濃茶を二つの茶碗に分けて点て、
お客様に飲みまわしていただきます。


 
茶杓:大亀老師作「無事」
仕服:細丸竜鳥襷緞子
茶入:大名物初花肩衝写

 
 
薄茶器、茶椀

茶器:大棗 輪島住吉蒔絵
茶碗:京焼 扇面
茶杓:塗 松葉絵

 

初釜の日の茶菓子


濃茶用主菓子:梅ヶ香
薄茶用干菓子:お勅題「火」と若緑結び

                                   

初釜後の一月の茶室

初釜が終わると茶室は元の静けさへと戻ります。
床の間の軸、花、棚の水指、茶器、炉縁が変わりました。

 
 
床の間
軸:高砂の図
初日を寿ぐ翁、嫗の姿です。
花:司うつぎの枝、台湾連翹の葉、
数奇屋侘び助    花器:越前

 
 

棚:竹台子

道具はすべて唐銅の皆具となりました。
茶器:五君子

釜と炉縁

炉縁が真塗にかわりました。
釜:万代屋釜

 
 

茶菓子

お茶を一層美味しく味わっていただく為に稽古日には季節を折り込んだお菓子を用意するよう心がけます。 毎月彩りの良いお菓子をいくつかお目に掛けていきたいと思います。
 
春告草
小菓子三種:梅、忘れな草、野うさぎ

 
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