三つの茶入


 ご存知のように、茶入は濃茶用のお茶を入れる陶製の容器です(薄茶器は木製)。
花入や香合と異なり年間を通して陶製のものを使います(花入、香合は冬のみ陶製)。
 わずか10cm足らずのものですが、茶道具の中で最も重要な地位を占めています。
常に大切なものとして扱われ、お客様一人ひとりが掌にとって、拝見をしますから、作り手にとっては気を抜けない道具です。
 ここに載せた3点の内、上の2点は昨年作ったもので、社中のみなさんが好んで使って下さいます。そして最後の1点はこの度作ったものです。
 茶入は本体が出来ても、共蓋は使いませんから、先ずは牙蓋を誂えなければなりません。
そして身を包む仕服が整って始めて茶入という道具になります。牙蓋は京都の象牙職人さんに依頼することにしています。
そして仕服は、手先が器用で、和裁も難なくこなす義妹が、出帛紗(だしぶくさ)を使って作ってくれました。

 

鶴首型茶入

土:
釉薬:
焼成温度:
焼成方法:
焼成時間:
高さ:
口径:
志野  
志野釉薬
還元
1230℃
7時間
7.3cm
4.3cm

 

細水甕型茶入

土:
釉薬:
焼成温度:
焼成方法:
焼成時間:
高さ:
口径:
信楽並
辰砂釉薬
1250℃
還元
8時間
8.4cm
3.8cm  

 

瓶子型茶入

 土:
釉薬:

焼成温度:
焼成方法:
焼成時間:
高さ:
口径:

志野
白化粧土&
梅染交趾
1220℃
酸化
6時間
8.2cm
3.2cm

乾燥終了

素焼後

施釉

本焼後

 
 瓶子型のものは始めて作りましたが、私には手強い形でした。
肩が張り、裾がすぼまっているので、安定感を出すのが難しく、すっきりとした立ち姿になかなかなりません。
 それに釉薬の梅染交趾の流れ易さにも悩まされました。使い始めて日が浅く、試し焼の回数が少ないので、まだ性質が掴みきれていないのです。
 写真のように釉薬のたれた部分が、焼き上がると下まで流れて、かろうじて一番下で留まっています。試しの段階では流れすぎて、棚板にくっついてしまい使い物にならない作品が沢山出ました。そこで融点と表示されている1230℃から少し下げて1220℃で本焼した結果です。
 また色についても予測が難しいことを知りました。この作品は厚掛けして焼きました。薄掛けで試し焼きしたものは淡いピンク色が出ていましたので、厚掛けすれば濃いピンクになるのではという予想が見事に外れた結果です。これからも試し、試しの繰り返しになることでしょう。


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