我家の庭の茶花たち

 母は茶稽古のある日の早朝には庭を巡って、その季節のその日に相応しい花々を選び、それを摘んで来て床に生けこんでおります。花屋さんの店先から安易に購入した花を床に生けることはおもてなしの心に欠けることと母は思っているようです。茶花は元々野に、山に人知れず咲く自然の花や木を手折って、自然にある姿を写したように生け込むのを好とするようです。しかも季節に遅れることの無いよう、季節をほんの少し先取りする気持で生けるように心がけているようです。盛り上がるようにして咲く洋花を花壇に植え、テーブルや飾り棚にも華やいだ花々を生けこむのが好きでした私が、いつの頃からか母に見習って庭に茶花を育てるようになりました。無駄なものを削ぎ落として生けた床の間の茶花の燐とした姿に、奥行きの深さや強さを感ずることが出来るようになったのかもしれません。繊細な野の花や木は、都会の空気や温度の違いに馴染まず育たないものも多いのですが、ようやく寒さが去って、陽射しが温もる頃に土を持ち上げて芽を出す花達に再会するのはとてもうれしいものです。


 
春庭の茶花
夏庭の茶花
秋庭の茶花
冬庭の茶花

茶室の12ヵ月表紙へ