夫が選んだやきものたち
The pottery collection of my husband

He loved pottery and collected them. 
He brought lot of pottery from many foreign countries.
I will show you some of them.

 聴くこと観ることが大好きだった夫は、好ましいものを身近に引き寄せ、心地良い生活空間を作り出すことを
楽しんでおりました。
音楽会、絵画展に足を運ぶだけでなく、家にいる時もいつでもレコードやCDの音を流しながら何かをしていま
したし、どの部屋の壁にも絵を掛けて、それらを時折入れ替えることも好きでした。
私の土いじりも楽しそうに眺めながら、遠慮のない批評も沢山聞かせてくれました。
 海外出張が多く、出かける度におみやげを沢山携えて戻る人でしたが、その中には必ずと言っていいほど、
やきものが含まれていました。
「これ茶碗に使えないかな」とか、「菓子器になりそうでしょ」と言いながら取り出していましたから、茶道具として
使う場面を想定して選んでいたものが多かったのだと思います。
出張先で現地の方に窯元などに案内して頂いたこともあったようですが、一人でぶらぶらと街を歩きながら、目に
留まった店を覗いてみるのが好きだったようです。作者の名や値段で評価することは無く、自分の感覚だけを
大切にしていたように思います。
夫が選んで持ち帰ったやきものの中から、茶陶器として活用している何点かをご紹介したいと思います。
 
韓国に出張した時に立ち寄った骨董屋で見つけたそうです。典型的な井戸型の高麗茶碗(写し)で、見込みの辺りに重ね焼したらしい跡がついています。あまり古いものではないようですが、しっとりと落ち着いて、風格があります。使い込んでいるうちに、外と内にほんのりと紅が浮き出してきました。土に含まれる鉄の作用だと思います。

From South Korea

現代李朝陶磁器作家 青坡窯 
李殷九作と箱書きにあります。
現地の駐在員の方の案内で窯元に出向き、選んだとの事です。
この土の色と釉薬の複雑な流れが気に入っていたようです。

From South Korea

これも一人歩きの時、店じまいをするという古美術店で見つけたそうです。李朝前期のものとの触れ込みだったそうですが、真偽のほどは分かりません。技巧を凝らさぬ素朴な形と釉付けで、あっさりと染付の絵付けがしてあります。

He found this one an antique art dealer in Tokyo.
He said "this bowl was made in Joseon Dynasty". I don't know whether it is true or not.

サウスキャロライナの露天で求めたもの。女性の作者が自ら売っていたそうです。
白磁にブルーと金の絵付けから、着物の柄を連想します。日常的には使いませんが、開放的な夏の冷水点には映えます。

From South Carolina

ブラジル・サンパウロからのおみやげです。
小ぶりで、高台は付いていません。くだけた野点の時などに使います。

From Sao Paulo

 
 これらの茶碗でお茶を点てて出せば大層喜んで味わい、時に自ら茶筅を握ることもありました。
母の茶室での初釜にはしばしば顔を出し、自分が選んだ茶器がどのように使われているのかを楽しんで見ていま
したし、中国から持ち帰り、母に贈った掛け軸が、お正月の度に顔を出すのを喜んでもいました。
 夫の祖父や父がそうだったように、沢山の作品の中から自分の気に入ったものを選んで手に入れ、それを傍に
おいて楽しむのが趣味の一つだったと言えると思います。
 
夫はルオーの藍が好きでした。この皿は夫が最も気に入っていたやきものです。この濃い藍色の下に、くねった龍の姿が薄く透けて見えます。作り手のセンスが煌いていると言っておりました。
茶道具としては「かいちん」のような透き通る菓子を配して夏に使います。金沢で入手したようです。

From Kanazawa in Ishikawa Prefecture

アイルランド、ダブリンからのおみやげです。
お正月の懐石など、大人数の時に重宝する、直径31cmの大皿です。呉須で墨絵のような筆使いの絵柄が気に入ったとのことでした。

From Dublin

左:Cedar Mesa Pottery と言われるものです。
ソルトレイクシティに行った時のものだと思います。彫り込みで花の地模様が描かれています。形も色も秋口の花入として最適です。
The left: From Salt Lake City

右:メキシコ・カンクーンのやきものです。
柄がはっきりしていますので、花が負けるのではと思いましが、緑とも白や赤とも相性が良く、春先の花入として重宝しています。

From Cancun, Mexico

これもCedar Mesa Potteryの蓋物です。
本来の用途は分かりませんが、私は蓋付菓子器として使っています。

From Brasil

ボストンで現地の陶芸家の個展を観た時に夫が選んだものです。「Raku(楽)」と表示されているのに私は戸惑いましたが、夫は「面白い絵柄じゃない」と表示には拘りませんでした。
口が狭いのですが、建水として使っています。

Native American Pot in Boston

 夫と一緒に買い物する時に、その即断即決ぶりにはらはらすることもありました。仕事の合間の短い時間に、
あれだけ沢山のものを入手して持ち帰るということは、どこでも目に留まったものを迷わずパッと購入していた
のだと思います。それでも外れは殆どありませんでした。季節ごとに変化を付けて茶室を和ませてくれる
やきもの達です。
 

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