Stowの春(2008年5月)

5月初旬のボストンは生まれたての初々しい緑に包まれておりました。4月まではいつ雪が降り、霜が降りるかもしれない天候ですから、風景は裸木と積もったままの落ち葉の世界です。陽射しが温もる5月を待ちかねて、木々が一気に目覚め、芽吹きと花々の彩りが日毎に広がっていきます。
娘の住むストーは、ボストン・ローガンエアポートから西へ49マイルほど、車で1時間強の長閑な田舎町です。隣接しているボックスボローには、かって夫の仕事場も、私共の最初の住まいもありました。環境も雰囲気もまことに良く似たボストン郊外の村々、町々です。そして10年一日の如く、町の佇まいが変わらないのです。ちなみにボローはvillage、レキシントンなどのトンはtownの意味だと現地の人に聞きました。待ちかねた春の訪れに生きいきと蘇った緑豊かな雪国ストーの風景をご覧いただけましたらと思います。


 
 

緑にすっぽり包まれたような、娘の家です。淡い緑のバックヤードは殆どがメープルとオーク、
そしてわずかなパインの林です。冬の間はこの林は裸木ばかりとなり遠くまで見通せるようになります。

 

プールクバーナ:プールはまだ覆いがされたままです。
クバーナの両脇の木々はオークです。20〜30メートルはあるでしょう。

 

バックヤードの林です。りすやあらいぐま、スカンク、時には鹿の親子の姿を見かけること
もあるそうです。晴れた日の日没直前、この林が黄金色に染まり、小鳥の囀りが俄かに
大きくなる瞬間があります。早朝の小鳥のうた声は東京でも春から始まりますけれど、
夕暮れ時には気付きませんでした。数え切れないほどの声が入り混じりますけれど、
鶯の声は決して聞くことがありません。

 

毎年この季節になるとここに来たくなるのは、この蒼い空と
緑の煌きの中に身を置く快さ故と思います。

 
 
庭先の小花たち

目を凝らさなければ見落としてしまいそうな小さな花たちが姿を見せ始めました。木漏れ陽の差す辺りに、オークやメープルの落ち葉を掻き分けるようにして。




 
 
花狩りドライブ

ボストン郊外は、寒さから解き放たれた木々が時を得たりと咲き競っておりました。花壇の花の植え込みは、遅霜の心配の無くなるマザーズデイ過ぎからですから、草花の季節はこれからで、今はもっぱらピンクと白の木の花の世界でした。


はなみずき
日本から贈られた桜への返礼としてアメリカはなみずきの苗木が日本に送られたのは
1912年とのことです。日本の春にもこの花は至る所で見られますね。
でもこの咲き方と大きさ、所を得たりの感があります。

 

クラブアップル
艶やかな色です。花の後にさくらんぼのような実をびっしりと付けます。ジャムや
ジュースに使われるそうです。耐寒性に勝れ、-30℃でも生き延びるそうです。

 

連翹と花桃
連翹は寒さに強い木とか、石楠花と共に春一番に咲き出します。
この時期は殆ど散っていました。手前は花桃。花だけを楽しむようです。

 

ライラック
ご存知の通り、寒い所の花です。良い香りがあたり一面に漂っていました。

 

アップル
こちらは林檎園の満開の白花です。ストーには7つの大きな林檎園があるそうです。

 

メープル
今までの花と趣を異にしますけれど、是非お目に掛けたいのがこのメープルの花です。
5月始め、天に向ってのびのびと広げた枝々いっぱいに臙脂色の小花をつけます。この
木は秋には見事な紅に染まることでしょう。でも紅葉しないメープルの花は黄緑なのです。

 
 
 
散歩道

娘の家から徒歩10分のStow Country Clubや、車で5分の静かな池(名前を知りません)の周りは私たちのお気に入りの散歩道です。その折々に豊かな季節の顔を見せてくれます。


夜明け(5:30am)です。春から夏の早朝にはよく霧が出ます。夫はお気に入りだったここで、
早朝にハーフ・ラウンドを周ってから出勤することもありました。ボールの行方も定かではない
夜明け前、霧の中でのプレイはなかなかミステリアスなものではありましたが。

 

夜がすっかり明けました。霧がわずかに残っています。
目を凝らせば、彼方に何人かのゴルファーの姿があります。

 

人の姿を恐れる様子もなく、のんびりと子育てに勤しんでいるCanadian geeseです。

 
ボストン郊外の5月の香りが少しはお手許に届きましたでしょうか。お付き合い頂きましてありがとうございました。陽射しに淡緑が輝く期間は、5月初旬からのほんの2週間ほど、20日を過ぎれば、開ききった葉は緑を増し、夏の気配を呈してきます。8月末までの3ヶ月間が外での生活を楽しめる貴重な時間、9月になれば、もう紅葉が始まるのです。冬が長く厳しい北国が春を迎えた直後の一番活気に満ちた季節の息吹きを胸いっぱいに吸い込んで帰宅しました。その地で生活していない者の良い所取りに少し後ろめたさも感じつつ。

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